事例紹介

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写真:寺田課長(左)と岡本部長

FAX変換サービス応用による
配送頻度の改善に向けた取組み

ハウス食品株式会社

2012年1月からFAX変換サービス出荷案内書を活用しておられるハウス食品様。
その活用の具体的な流れと効果、また新たにそれを応用したシステムについてうかがいました。(本文敬称略)

ご担当者様

  • ■ハウス食品株式会社
    営業企画推進部 部長
    岡本 雄一 様

    営業企画推進部 営業基盤課 課長
    寺田 剛正 様

受発注EDI活用は家庭用・業務用で85%

――はじめに貴社におけるEDI活用状況についてお聞かせください。

岡本

ハウス食品では業務効率化のため、過去から積極的にEDIを活用して参りましたが、最近は働き方変革(ハウス食品では改革ではなく変革と呼んでおります)の観点から、より一層力を入れて取り組んでおります。

少し話が大きくなりますが、「人口減少」「高齢化社会」といった国内市場、「生産年齢人口減少」や「ダイバーシティ」といった雇用・労働環境など、私共を取り巻く状況は劇的に変化しております。このような中「選択され、生き残る企業」であるために、企業は持続的な発展を通じて社会に貢献し続けなければなりません。また、いま「人生100年時代」といわれておりますが、企業は「共に働く社員の豊かな人生に貢献する」存在でなければなりません。

そのなかで、ハウス食品では「働き方変革」を掲げ、社員が公私ともども生き生きと働くことができる環境を創ることを進めております。「ワークスタイル変革」と「マネジメント変革」を2つの柱にしつつ、さまざまな切り口から業務変革にも取り組んでいます。この取組みの一環として、EDI活用があり、業務の効率化につなげていこうとしています。

寺田

EDI以外の受注手段は殆どがお取引先様からのFAXで、これについては東西2か所の受注センターで受注入力業務を行っています。現段階で家庭用・業務用分野あわせて85%がEDI化されています。この1年間では、かねてから課題であった受注件数が多いお取引先様との受注のEDI化ができており、これもハウス食品グループの業務効率化に大きく寄与しています。

また、販売促進金の請求・支払に関してもEDI化を推進しておりますが、EDI化率はまだ65%程度(金額ベース)であり、販売促進金請求書を紙ベースで頂戴しているお取引先様も少なくありません。このような状況の中、営業担当者の業務を効率化するため、お取引先様からEDI以外で頂いている販売促進金の請求書については、グループ会社で入力作業を纏めて行い、営業担当者はEDIであるなしに関わらず、画面上で処理をすることが可能な状態にしております。

大きく減った作業量

――FAX変換サービス出荷案内書の活用はどのように始まったのですか?

寺田

まず紙ベースで行っていた納品書(出荷案内書)発送のフローから説明すると、東西2か所の受注センターで印刷―仕分け―封入を行い、お取引先様に発送していました。伝票枚数としては年間24万枚、封入は5万4千通。作業時間は年間720時間かかっていました。FAX変換サービス導入前は、この作業にかかる労力や資材、発送費などが大きく、業務削減・効率化の一手段として、2011年の秋から具体的にFAX変換サービス出荷案内書の利用検討に着手し、2012年の1月にサービス利用を開始しました。

――FAX変換サービス出荷案内書を始めたポイントは?

寺田

このサービスは、共通のフォーマットをもとにしたサービスなので、自社開発するのではなく、導入時にかかるイニシャル・コストおよび運営のランニング・コストが抑えられること、既に他のメーカーで活用実績があることがポイントでした。また、FAX変換サービスを利用することで、同サービスを利用している他のメーカーと同じ書式になるため、お取引先様にもご理解が得られやすいのではないかと考えました。

――どのように進めていかれたのでしょうか?

寺田

物流部門、情報システム部門、営業部門からメンバーを選出し、プロジェクトとして進めました。まずは、お取引先様に、EDI、FAXのいずれかを選択いただける通知を出し、営業担当者が1ヵ月かけて確認を行いました。並行してシェアード会社であるハウスビジネスパートナーズのシステムサポート事業部にてシステム開発を行い、その後の運用チェックを経て、年明けの2012年1月15日からFAX変換サービス出荷案内書の運用をスタートしました。

――実際に、FAX変換サービスを利用されて改善された点をお聞かせください。

寺田

現在、FAX変換サービスの利用を始めて6年経ちます。実際は、どうしてもEDI、FAXともに対応が難しいお取引先様もあり、「紙(郵送)」という選択肢を残したため、全廃という訳にはいきませんでしたが、紙の郵送の59.2%を廃止することができました。作業時間も3分の1、年間240時間に減り、大きな業務効率化になったと思います。しかし、前述の通り、まだまだ紙(郵送)とそれに伴う作業も残っていますので、更にお取引先様へのアプローチを行い、FAX変換サービス出荷案内書の利用を拡大することで、より一層の業務効率化を進めていこうと考えています。

配送頻度の改善に向けた取組み

――貴社はFAX変換サービス出荷案内書を応用して、小口発注の抑制にも取り組まれています。この取組みの経緯をお聞かせください。

岡本

西日本豪雨や北海道胆振東部地震など、2018年は自然災害が特に多い年で、様々な混乱が物流現場にも生じました。また近年では「物流クライシス」が社会問題となっており、このままではせっかくお取引先様から注文をいただいておりながら、商品をお届けできない事態が頻発しかねない状況です。お取引先様からの発注に対し滞りなく商品をお届けし続けていくためには、物流事業者の方々に「選ばれる荷主」でなければならないと考えております。そうした中で配送ロットに満たない発注への対応は、配送頻度やトラック台数の最適化の視点から、喫緊の課題として取り組んでいます。

寺田

弊社では、以前からお取引先様への配送ロットの基準を設けておりましたが、有名無実化してしまっておりました。しかし近年では「物流クライシス」が社会問題となり、配送ロットの基準に満たない発注については、配送頻度を高め、待機時間をいたずらに長くするものとして認識されるようになってきました。このような中、課題を解決し「運べなくなるリスク」を低減するため、配送ロット改善による配送頻度減少に向けた取組みをスタートさせました。

配送ロットに満たない発注をシステム的に単純に取り消すことは簡単ですが、それではお取引先様のご理解を頂くことはできません。お取引先様のご理解を得ながら、配送ロットを改善させるためには、まずは「配送ロットを満たしていないことをお伝えする」ことが重要だと考えました。その通知のための手段としてFAX変換サービス出荷案内書を応用しようと考えたわけです。

――FAX変換サービスでの通知はどのように運用されていますか?

寺田

弊社の受注の締め時間は当日の午前10時30分としています。その後、社内システムで受注を締める段階で、配送ロットの基準に満たない商品があった場合、FAX変換サービスを活用し、当該発注内容を取り消す旨を記載したFAXを配信しています。
FAX変換サービスで、この運用を開始したのは2017年6月からですが、4~5月を準備期間として設けました。準備期間では、お取引先様に対しこれまでの発注実績をご案内し、本取組みにご理解をいただけるよう丁寧に説明して回りました。

また、準備期間に配送ロットの基準を満たしていない発注があった場合は、「配送ロット基準を満たしていないため、6月からは発注内容が取り消される」旨を記載したFAXをこのサービスを利用して配信することで、お取引先様への周知徹底を図りました。同時に、発注の取り消しを通知するFAXがお取引先様に届かないことを避けるために、各お取引先様の発注部門のFAX番号を確認することも実施しています。

もちろん、お取引先様から配送ロットの基準を満たしているにもかかわらず、弊社側で欠品・品薄などがあり、その結果基準に満たない場合には出荷を行ないます。また、そのお取引先様が次回注文時、その欠品商品を含む場合は、基準を満たしていなくても出荷を行ないます。

――運用開始から1年以上経過しましたが、具体的にどのような成果が出ていますか?

寺田

今回の配送ロット改善による配送頻度減少に向けた取組みにより、取組み前の2017年3月と取組み後の2018年3月の比較において、1届け先当たりの配送頻度は1週間で1.38回頻度が少なくなりました。また、納品ケース数についても、1届け先への1回あたりの配送数量は約10ケース増えました。配送頻度が減少した分だけ待機時間削減に貢献できているはずであり、大きな成果が出ていると認識しています。

岡本

誤解の無いよう念ため申しますが、配送ロットの改善は、近々の課題である「運べなくなるリスク」を低減させるための手段であり、目的ではございません。例えば、業務用製品はエンドユーザー様が弊社製品をご利用いただいているかどうかが、発注数に大きく影響してきます。本来のメーカーの使命である業務用のお取引先様やエンドユーザー様に支持していただける商品を開発することにより、発注数が増え、その結果として配送ロットが改善されることがあるべき姿だと考えています。このことは忘れずに、今後も推進していこうと思っています。

さらなるサービスの拡大・充実を

――ファイネットに期待することは。

寺田

FAXなどでいただいている受注を、いかにデータ化していくかということは、引き続き大きな課題です。自然災害などで受注センターの社員が出社できない場合も、EDI受注分に関しては、後続処理に回す事ができるため、業務効率化だけでなくBCP的な観点からも推進すべきと考えます。そのための取組みをファイネットに期待しております。例えば、お取引先様にとって使いやすいWebEDIの開発、あるいはお取引先様に専用の発注端末を配布し、日食協標準EDIフォーマットで各メーカーが受信できるようにすることなどです。画像認識の技術を駆使して、お取引先様からのFAXをファイネットがデータ化し、日食協標準EDIフォーマットで配信することもできるのではと思っています。

個社で最新技術を実務に落とし込むことは様々な面でハードルが高いですが、情報系の共通インフラであるファイネットであれば、それが可能だと信じております。

最後になりましたが、受発注EDI以外では、販売促進金EDI拡大について、引き続き普及推進をお願いしたいです。

岡本

VANサービス基盤に関する災害時のDR(ディザスタリカバリ)機能については、ファイネットも十分な対応をされています。2018年は自然災害が多く、台風・地震などの影響で、商品の未着や持ち戻りなど、物流についても様々な混乱が起こりました。メーカーとしては、お取引先様の状況、物流の状況が少しでも分かればと思っております。情報の公開範囲の問題など調整が難しい事は理解しておりますが、そういった情報を共有できる機能をファイネットに提供いただくことができればありがたいと思っています。

酒類・加工食品業界の「情報系の共通インフラ」として、業務効率化と標準化推進に更なるご尽力を頂けることを期待しております。


CORPORATE PROFILE

ハウス食品株式会社

『食を通じて、家庭の幸せに役立つ』
私たちは、この企業理念の意味をしっかりと理解し、事業への取り組みに強い意志を持つことが、なにより大切と考えています。
成熟した食マーケットでは、ライフスタイル、食ニーズが大きく変化しています。既存商品を磨き、お客様満足を高めることと合わせて、積極果敢に新しいテーマにチャレンジし、多くのお客様に多くの場面で「幸せ」を感じていただけるお手伝いをすることが私たちの役割と考えています。
これからも私たちは、常にお客様の立場に立ち、お客様起点の経営に徹し、多くのお客様にお役に立てる製品づくりに取り組んで参ります。