事例紹介

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ASN(事前出荷情報)活用による
「検品レス」の実現

加藤産業株式会社、キユーピー株式会社

加工食品メーカー・卸間物流における「車両待機時間の低減」「荷役作業やドライバーの作業環境改善」等のさまざまな社会的課題の解決につなげる加藤産業株式会社様とキユーピー株式会社様の取組みについてうかがいました。(本文敬称略)

ご担当者様

  • ■加藤産業株式会社
    ロジスティクス部 次長
    山本 智元 様

    情報システム部 課長
    井上 良成 様
  • ■キユーピー株式会社
    ロジスティクス本部 企画部
    業務推進チームリーダー
    森本 雄介 様

――「検品レス納品」の検討を始められたきっかけは何だったのでしょうか

山本

ASN(事前出荷情報)を活用した「検品レス納品」の考え方は、既に小売業様の専用センターで代行検品を実施することによって、店舗での検品作業を省力化することは常識となっていましたが、一方、「製(メーカー)-配」の間では従来から大きな問題意識がないまま進んでいた経緯もあり「製-配」間でも一緒に取り組んで解決できる課題はないかと模索する中で、昨今の社会的課題を含め「製-配間の検品レス納品」の検討を始めました。

森本

きっかけは、2011年3月の東日本大震災で大きく変わりました。納品リードタイムや鮮度競争など日本の行き過ぎたSCM競争に改めて目を向けることとなったのではないかと思います。「検品レス納品」の運用検討も大震災と同年の2011年秋から本格始動し、加藤産業様と膝をつき合わせて繰り返し協議する中で、着眼したのが発注から納品までのリードタイムでした。納品前々日夕方のご注文による半日の時間的制約が緩和できれば、かねてから提案いただいていた検品レス実現の道もあるのではないか、と考えたのです。

――「検品レス納品」の運用ルールを検討するうえで重視したポイントや苦労された点はございますか

井上

システム開発の立場で言いますと、メーカー様にとっていかに判りやすいASNフォーマットを作れるか、というのが大きな課題でした。日食協標準EDIフォーマットの考え方をベースに、判りやすく、使いやすいということを第一義に考えました。あわせて注意したのは、現場の運用にできるだけ負荷をかけないような仕組みにするということでした。運用面では、納品業者間でトラブルに繋がりそうな事象をいかに排除するか、という事に対して特に配慮を行いました。

森本

データ項目を決めていく上で特徴的だったのは、加藤産業様とキユーピー2社間の利用にとどまらず、最初から業界標準というものを見据えていたことですね。フリーフォーマットを使って始めたものを既成事実化して、最終的には日食協標準EDIフォーマットに乗せていただきたいと考えていました。

山本

「検品レス納品」の話を行いますとメーカー様から概ね2つの質問があります。1つ目は、パレタイズデータに関する質問です。双方で使っているパレットの番号は当然違いますので、これをどうするのか。キユーピー様とパレット番号は、ユニークな番号としセンター側で置き換え処理をすることで解決しました。
2つ目は、在庫誤差が出た時にどうするかということです。キユーピー様との間では、何度か打ち合わせを重ねる中で、在庫誤差についても従来ほとんど出ていないので、その時点で考えればいいという事と、仮に発生した場合でも弊社システムで履歴が追求できる環境がありましたのでとにかく前向きに進めることができたのが大きかったですね。

森本

物流に対する危機意識が大きく高まってきた時期でしたので、取組みを関係者に理解させやすい環境にはあったと思います。時間的にタイトな納品現場でのドライバー作業を、加藤産業様の発注調整のご協力で得た納品リードタイムを使って出荷段階の荷役作業でやってしまおうという発想は、社内的にも理解されました。同時に、出荷を担当するキユーソー流通システムの現場メンバーの仕事のやり方変更・残業削減といった働き方改革やモチベーションの向上にもつなげながら取り組みました。

山本

リードタイムに影響する検品レス実施に伴う発注業務の調整にあたっては、得意先や在庫への影響ができるだけ出ないように、朝の受注の少ないセンターを選定するなど、発注担当者といろいろ協議しながら決めていきました。

森本

在庫誤差についてですが、まず日本の物流においては検品作業時の誤差発生率は相当低い、という現状があります。加藤産業様のご協力をいただいて精度の高い出荷時検品を実施できる体制を整え、それでも万一誤差が生じた場合はお互い誠実に調査して解決するということで乗り越えました。

山本

現場では初めてのケースなので、通常納品の車両への配慮もポイントでした。優先バースや優先時間帯を設けるにあ たり、他の車両にも分かるように貼り紙をするとか、許可証を発行したりというところは、キユーピー様と話し合いながら、運用設計していきました。
検品レスの場合、そのデータをどの時点で反映させるのか、ということは問題になります。在庫として反映させるタイミングとか、分納の時はどうするのかとか、現場としっかりすり合わせながら決めていきました。現在は、荷物が届いてから在庫に反映させています。

――長期にわたる検討が実を結び2013年1月に「検品レス納品」が開始されました。そしてこの取組みがこの年のグリーン物流パートナーシップ会議特別賞を受賞されました。「検品レス納品」の具体的効果は、発表資料の中に詳しく記載されていますが、この他にどのような成果があったとお考えですか

森本

1年以上丁寧に検討をする中で、「検品レス納品」以外の課題にも目が向くようになりました。たとえば毎日配送ではなく月水金にまとめることによって検品レスの効果を上げることができます。従来と違う事を始める時は不安がつきものですが、乗り越えて実現することで、さらに違う工夫や働き方を追求するモチベーションになります。

井上

庫内作業効率化の課題は、従来から目を向けていなかったわけではありませんが、入荷業務に対しての取組み、スピードが少し遅かったように思います。キユーピー様との取組みをきっかけに、活動内容が業界に知られる事によって他社との取組みが具体化しやすくなったと考えます。

――両社の取組みから、日食協物流問題研究会においてASNのデータフォーマットの標準化が検討され、2016年4月に「日食協標準EDIフォーマット」の新たなデータ種として「7A事前出荷情報(ASN)」が制定されました。また、2017年3月にはファイネット商品流通VANサービスのデータ種としてリリースされました。この意義をどのようにお考えでしょうか。

森本

標準フォーマットが制定されたのは大きな一歩です。ファイネットにはぜひ広める役割を担ってほしいです。理解が進んでいく中で、他のメーカー様や卸様からこうすればもっと良くなるとか、議論がどんどん深まればいいですね。爆発的に広まっていくものではありませんが、スピードを少しでも上げるために、ファイネットの活躍に期待しています。

井上

実装に対しては我々の活動が認められたという事で、これからに対し大変期待を持ちました。一方で、我々が長い時間をかけ試行錯誤しカットオーバーしたものに対して、どこまで理解し活用していただけるのか、というところがとても気になります。ASNデータは、現場の事を第一に考え、現場の問題を解決するために定められ、活用されるものでなければなりません。データ交換に縛られて現場でやりたいことができなくなる、というのは本末転倒です。息の長い取組みになりますが、ASN活用でできることがあればぜひやっていきたいです。お取引先と協力しながら様々な取組みをしていきたいと考えています。

――物流効率化に向けた今後の展望をお聞かせください

森本

標準フォーマットができたので、今後それを使って他の卸様とも検品レスを拡大していきたいです。標準フォーマットで必要な条件を満たすうえでどういうやり方ならばできるのか、そこは相対で協議しながら決めていくことになると思います。

山本

他メーカーの荷物が混載で届いている部分もあり、取組みメーカーの拡大ができれば検品レス効果は高くなります。 まずは現在検品レスを実施している拠点でのメーカー数を増やしたいですね。他にも、メーカー様の運用形態に合わせて、混載バラ積みで来る路線便を検品レスにできないかとか、弊社から入荷予定データをお渡し、あらかじめ検品した複数メーカーの商品を一緒に持ってきてもらうとか、そんなことも検討を始めています。メーカーのタイプによって、いろいろな方法で検品レス実現を探っていきたいです。



CORPORATE PROFILE

加藤産業株式会社

わたしたちは、「豊かな食生活を提供して、人々の幸せを実現すること」をミッションに掲げています。
加藤産業グループが今後どのような価値を提供してビジネスを作り、社会の中でどのような存在になっていくか、食を扱う企業としての社会的使命と事業領域をミッションとして定め、わたしたちの事業活動や取り組みを通してその達成を目指してまいります。


キユーピー株式会社

キユーピーグループは、創業以来「良い商品は良い原料からしか生まれない」という考えのもと、安全・安心、おいしさを追求した食品づくりに励んできました。
キユーピーは1919年に創業。1925年に日本初のマヨネーズとしてキユーピー マヨネーズを発売。以降、ドレッシングやパスタソースなど日本初の商品を世に送り出すとともに、タマゴやサラダ、惣菜など幅広い領域に展開しています。
その歴史の中で培った技術力により、食品にとどまらず医薬品・化粧品原料まで、国内外の幅広いお客様に商品を提供しています。