事例紹介

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写真:(奥左から)鴫原 圭子 様、平山 修 様、川﨑 康輔 様(手前左から)平尾 悟 様、松丸 真 様

事前出荷情報(ASN)を活用した
物流改善の取り組み

日本酒類販売株式会社

「ドライバー不足」や「物流インフラのコスト増」といった物流の課題が社会的問題になっています。日本酒類販売様ではそうした物流課題を改善する一つの手段として事前出荷情報(ASN)を活用した検品業務の削減に取り組まれています。今回は取り組みの経緯やその効果についてお話を伺いました。(本文敬称略)

ご担当者様(取材当時)

  • ■日本酒類販売株式会社
    取締役上席執行役員
    情報物流本部 本部長
    平尾 悟 様

    情報物流本部
    情報統括部 部長
    松丸 真 様

    情報物流本部
    物流統括部 部長
    平山 修 様

    情報物流本部 情報統括部
    開発二課 担当課長
    鴫原 圭子 様

    情報物流本部 物流統括部
    物流企画課 課長
    川﨑 康輔 様

EDIの取り組み

――はじめに貴社の事業概要についてお聞かせください。

平尾

弊社は1949年(昭和24年)に東京都中央区槇町(現八重洲)にて創業いたしました。以来約70年にわたり「豊かな酒・食文化の発展」を目指し、酒類・加工食品の卸売業として、単にものを販売するだけではなく、時代のニーズに合わせた商品を提案、お届けしてきました。現在、全国各地に営業拠点は15支社、21支店、12営業所を設けており、お客様のご要望に対し迅速で最適な対応を行うべく日々社業に励んでおります。酒類・加工食品業界を取り巻く環境は刻一刻と変化を続けています。その中で総合酒類を扱う弊社は、さまざまな機能を絶え間なく磨くとともに、新しい価値を創造し、酒類・加工食品業界に必要とされる卸であり続けたいと考えています。

――メーカー様とのデータ交換(EDI)の取り組みについてお聞かせください。

松丸

弊社はおよそ30年前からメーカー様とのデータ交換を開始し、現時点で受発注は111社、出荷案内は83社、販売実績は50社、販売促進金は19社とデータ交換を行っております。EDI化率は受発注が45%、出荷案内が55%という状況です。また今日の本題である事前出荷情報(ASN)については制定されて間もないデータ種のため、現時点で3社とデータ交換を開始しており、更に拡大に取り組んでいるところです。

――企業間のデータ交換については協調の流れが出始めているそうですね。

松丸

データ交換自体は非競争領域で、共同で取り組むべきだという認識も広まりつつあります。メーカー様とのデータ交換については一昨年から同業卸6社が合同での推進活動を開始されており、弊社も昨年からその活動に合流しました。

鴫原

データ交換にあたってはお互いにコードを変換する負担を削減するために納品先を表す統一取引先コードなどの標準コードを出来る限り使用するよう努めております。各社が協調し標準コードの活用が進むことで業界全体のコスト削減に寄与すると思います。

事前出荷情報(ASN)の活用

――2021年に新たに事前出荷情報(ASN)のデータ交換を開始されました。活用に至った経緯についてお聞かせください。

平尾

昨今取り沙汰されている「ドライバー不足」や「物流インフラのコスト増」といった社会的問題に背景があります。この問題を解決していくため、現在、国土交通省を中心に国を挙げてさまざまな改善活動が各所で行われています。弊社も2019年に国土交通省・経済産業省・農林水産省などが共同で主導されている「ホワイト物流」推進運動に賛同し、共同物流の推進、入荷受付システムの導入など、様々な形で物流改善の取り組みに努めてまいりました。事前出荷情報(ASN)を活用した検品業務の削減(入荷検品レス)は、そうした活動の一環として行っております。なお入荷検品レスについては、酒類・加工食品業界でもなかなか進んでいないのが実情ですが、同業の卸数社様が業界の苦境を改善すべく、果敢にお取り組みをされています。弊社として何か貢献できないかと考えておりました。

平山

事前出荷情報(ASN)のデータ交換開始については、キリンビール様、キリンビバレッジ様から数年前よりお声掛けいただいており、2年程前にアサヒビール様からもお声掛けいただきました。業界大手のメーカー3社と弊社が事前出荷情報(ASN)のデータ交換を開始することは業界内でもかなりインパクトがあり、物流改善推進に寄与できると考え、本格的に取り組みを開始しました。

――実際に事前出荷情報(ASN)を活用した入庫の流れを教えてください。

川﨑

弊社から送信する発注データに基づいて、メーカー様側で確定された出荷内容を事前出荷情報(ASN)として入荷前日に送信していただきます。受信した事前出荷情報(ASN)を倉庫管理システムに取り込み、弊社側の発注データに基づく入荷予定とマッチングを行い、最終的な入荷予定として確定させます。入荷当日はドライバーが倉庫に入構した際に、持参いただいた納入商品のリスト(バーコード表示)を弊社にてスキャンすることで、入荷確定します。その後、荷下ろしを行い、弊社側では破損や汚損などの確認(品質検品)だけを行います。最後に受領伝票に押印し、ドライバーにお渡しして出構いただきます。この運用は2021年6月より日酒販厚木L.Cにて開始し、現在、首都圏のもう1拠点を加え2拠点で運用しています。対象商品は、キリンビール社製品(一部製品を除く)、キリンビバレッジ社製品(全品)、アサヒビール社製品(全品)です。

――事前出荷情報(ASN)の活用によって得られた成果をお聞かせください。

川﨑

弊社としては入荷検品時における数量・鮮度情報(賞味期限など)の確認やシステムへの入力作業が無くなることは大きなメリットです。またドライバーにとっても従来の検品作業が完了するまで待機する必要が無くなるため、車両待機時間が削減され物流の効率化にも繋がります。破損・汚損といった品質検品は引き続き行っていますので、弊社としてはノー検品ではなく検品レスと位置づけています。

平山

物流センターの労働時間削減も見込んでおり、物量の安定しないコロナ禍での評価でありますが、まずは生産性1割の向上を目指して取り組んでおります。また、今後物量が安定した際には、コロナ禍以前の平常時と比べ2割程度の向上を図りたいと考えております。

――事前出荷情報(ASN)の活用にあたりご苦労された点や留意点をお聞かせください。

鴫原

事前出荷情報(ASN)が業界で広まっていくことを念頭に、あくまでも「業界標準」を意識して自社システムの開発を進めてきました。具体的には、データ形式は「日食協 EDI標準フォーマット」に則っています。メーカー様と打合せを行い、パレット管理番号などのメーカー様によって値が異なる項目については念入りに確認し、項目の設定内容などに行き違いがないようにして参りました。

川﨑

倉庫管理システムへの事前出荷情報(ASN)の取り込みなどの開発を行いました。開発の際には当然のことながら物流現場(ドライバーや入荷作業員)に運用業務の負担が掛からないよう調整を行いました。またメーカー様と弊社営業部門、発注部門にて運用ルールの確認を行いました。特に予約品や限定品、割当品においてはイレギュラーな注文形態も多いためです。鮮度管理においては物流部門、マスター管理部門と連携して、鮮度区分・日付形式(製造日・賞味期限・日月旬)などがメーカー様からの事前出荷情報(ASN)と弊社システムの登録内容に差異がないか確認を行いました。

今後の方針

――今後の方針をお聞かせください。

松丸

昔からある受発注、出荷案内、販売実績の他に近年では販売促進金や事前出荷情報(ASN)も共通フォーマットでメーカー様とデータ交換することで業務効率化、コスト削減に繋がっています。そのためデータ交換いただけるメーカー様を増やしていくと同時に業界全体の業務効率化、標準化に繋げていきたいと思っています。

平山

現在、事前出荷情報(ASN)を活用した入荷検品レスの取り組みは2拠点のみで実施していますが、ある程度運用方法は固まってきましたので、首都圏を中心に他の物流拠点にも横展開を始めていきたいと考えています。また実施できているメーカー様が3社のみですので、こちらについても拡大していきたいと考えています。

――ファイネットに期待することがございましたらお聞かせください。

松丸

業界共通のプラットフォーマーとしてデータ交換基盤や統一取引先コード管理センターの安定運用、また業界内での一層の普及に向けた啓発活動を期待しています。

平山

事前出荷情報(ASN)については、対象メーカー様拡大の際に橋渡し役としてご協力いただきたいと思っています。

――ご期待に沿えるよう引き続き取り組んで参ります。本日は貴重なお話をお聞かせいただき有難うございました。

CORPORATE PROFILE

日本酒類販売株式会社

1949年(昭和24年)に東京都中央区槇町(現八重洲)にて創業し、以来約70年にわたり「豊かな酒・食文化の発展」を目指し、酒類食品の卸売業として、単にものを販売するだけではなく、時代のニーズに合わせた商品を提案、お届けしてきました。
現在では、全国各地に拠点を設け(営業拠点:15支社、21支店、12営業所)お客様のご要望への迅速で最適な対応に努めています。

設立
1949年7月1日
資本金
40億円
売上高
連結:5,200億円 単体:4,951億円 (2021年3月期)
社長
田中 正昭
社員数(単体)
755名 (2021年3月31日現在)
本社
東京都中央区新川一丁目25番4号